歌人の穂村弘さんが「てのひら怪談」のトークイベントにゲスト出演されるということで聞きに行った。「てのひら怪談」は800字以内で怪談を、というオンライン公募の(文学上の)試みである。第四回にして著しくレベルが向上したため出版の運びとなったそうであるが、実際読んでみると、たしかにかなりおもしろかった。穂村さんが書いているポプラ社のweb連載「天国さがし」にも登場する東雅夫さん(選者)が司会。選者加門七海さん福澤 徹三さんのほか、なんとサプライズゲストは京極夏彦さん&平山夢明さんだった。ごーかだ。
トークの内容で興味深かったのはてのひら怪談と短歌との比較。以下メモ書き風再録。かなりうろおぼえ。
そもそも怪談は文学ジャンルとしてではなく、一種のコミュニケーションツールとして存在してきた。江戸時代以前にいまあるような怪談というものは存在していなかった。しかしネットというメディアと怪談は相性がよく、短歌の題詠に通じるような「800字の怪談」という制限を設けたことにより、洗練の度合いが進んだ。つまり、ショートショート、詩、オチの余韻等、単なる怪談の要素以外の幅が出てきた。穂村氏によれば、ここで朗読した作品「矢」「火傷」では、(怪だけでなく)人生などのメタファーすら見えてくる。
京極氏。文章にはうまいもへたもない。意味が伝わればよい。さらには意味以上のことが伝わればよい。だが(実際は「伝える」ことはできなくて、)相手が「伝達された!」と思えるかどうかしかない。プロとアマの差は、いい作品をずっと出し続けていけるかどうかだけである。(短歌もだ・・・)
幻想も怪奇ももともと日本のものではなかった。怪談の定義についていえば、本当にあった話かどうかは問題ではなく、プレゼンテーションの仕方の問題である。そういう意味で800字制限は武器になりうる。なぜなら怪談のキモは「情報の欠落」だからである。
(これも短歌に似てる・・・)
いわゆる「超短編」の試みは500字制限で、これだと詩の方へ行ってしまう傾向がある。(800字だと小説・物語になれるということらしい。てきとーに決めた字数にしては成功だった、と東氏)詩になると、(選考する目からいうと)読み手のハードルが上がってしまう(=辛い)。小説はゲーム性もあり、読むのが楽しい(穂村氏)
類想の多さが目立ったが、(快速のとまらない休日のホームに・・・、アンティークの人形が・・・など)逆にテーマが同じだと優劣はすぐわかる。
プロからアマの境界がグラデーションになっているのは怪談も短歌と同じ状況といえる。
短歌だけで食べてる人はいない。長編とちがってこの制限でうまく書ける人というのがいるかもしれない。陸上競技で幅跳び(?)と三段跳びはあるが二段跳びはなくて、もしかして二段跳びというジャンルがあればそこで才能を発揮する人がいるかもしれない(てのひら怪談=二段跳びになるか?)、という穂村さんの話(これはどこかのイベントでも聞いた気がする)。多くの文学ジャンル(本格推理小説、みたいな)がそうであるのと同様、怪談の「定義」や必要不可欠の要素は決められないが、読めばこれは「てのひら怪談スタイル」だ、とえるようなジャンルがいずれは確立されるかもしれない(加門さん?)。
選者加門七海さんは「恐い話が好きなので恐い話を読ませてくれ」と懇願していた(怪談の審査なのに恐くない作品ばかり、というのが皮肉というかおもしろい)。だが選ばれる作品はどこか一点(最後の1行とか)で怪談たりえている、というかそういう着地のさせ方をちゃんとしている。これもプレゼンの妙。
アベレージ80点取れることはプロになる条件ではあるが、傑作(120点)が生まれるためには外部の力を必要とする。読み手の感情(外部力)が怪談を怪談に仕立てていく。
怪談としてラベリング(パッケージング)されて世に提示(プレゼン)されることによって怪談になるのであって、ジャンルなんて「商業的ラベリング」によって確立されるものだ。そして型ができたときにはそのジャンルはもうおしまいで(爆)、そこへ進んでいるときがいちばん面白い(京極氏)
この暗中模索が楽しい。
・ ・・こんな感じで。もっと楽しげだったんだが割愛。
京極さんの切り口はおもしろかった。「文学版村上隆」なところもありで。今日はゲストだから口数少なめだったが、穂村さんのコメントは毎度説得力がある。文章力がしゃべりにも出ているかんじ。普通は書くようにしゃべることはなかなかできないものだ。
(短歌だろうが怪談だろうが)要はたくさん、ずっと、いいものを書けるかどうかということだった。
スピッツで言うと「夜を駆ける」「トゲトゲの木」とかは、どこかしら「てのひら怪談」な匂いを持っているような気がする。空気としてね。
(妄想短)
嫌われたその日に買った緑茶にはもちろん茶柱は入っていない
首都高の継ぎ目に弾む3号線 君ならどんな歌を詠むのか
ほむほむのトーク青縞シャツの謎何枚あるのか一枚なのか
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